2000年3月31日(金) 続き
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初めての夜行列車。それも、寝台ではなく、普通座席。そして、外国。言葉は通じない。ひえ〜〜〜!! 今更ながらに大それた計画を立てたものだとちょっぴり後悔した。
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まずは、腹は減っては戦は出来ぬなので、セルフサービスのカフェテリアで晩御飯を。前回のカフェ利用で、いくつか学習した事項があった。
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・ビールを先に取ると、料理を選んでいるうちに温くなる。(これは、私が優柔不断なせいでもある。)
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・サラダは、ドレッシングがない。(サービスであるのはオリーブオイルだけ。)
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・別に、サラダからデザートまでフルコースでチョイスする必要はない。
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これをもとに、まずはメインディッシュを決めようと、グリルのコーナーでサーモンのソテーを選ぶ。レモンを絞っただけのシンプルな味付けだったが、とっても美味。プリマはマカロニグラタン。サラダはサラダバー形式(っていっても5種類くらいしかないけど)でトマトばっかりのせた。それにビールをのっけて、21800リラと自分ではかなり奮発。サラダは、年をとるにつれ好きになってきたので、サウザンアイランドとか置いといてくれたら、どっさり食べたのに。ってかんじ。
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トイレをすませ、スーパーへ行ってヨーグルトドリンクとマドレーヌ(朝食用)を買う。10時過ぎにはホームに戻ったが、 まだ列車は入線していないようだった。隣のホームにはミュンヘン行きの夜行列車が止まっていたので、下見がてら覗きに行った。
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ひ、ひえ〜〜〜!! なんか車内は真っ暗で、車体も古ぼけている(国際列車なのに!!)。そして、みんな窓から顔をだしておしゃべりをしたり、売り子から水などを買ったりしている。
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ひ、ひえ〜〜〜!! 自分も、今からあの空間に入っていくの??? ドキドキドキ・・・・。
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そして、夜10時20分。私の乗るミラノ行き夜行列車が入線した。これからのことになぜか心臓がバクバク言っているのがわかる。緊張している。列車は、さっき見学したミュンヘン行きよりは幾分きれい目だった。
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すぐに列車に乗り込み、座席指定をした自分の席を探す。1両は定員6人のコンパートメントが10室くらいあり、座席指定をしている人は、私を含めて2、3人だった。自分の席を見つけて、コンパートメントに入り込む。暗い。電気を点ける。でも、電気を点けてしまうと、外から中が丸見えになってしまう。 結局電気は消し、入口のカーテンも閉め、いかにも「この部屋は埋まってま〜す!!」って感じを演出するべく、息を潜めてじっとしていた。そして、祈る。誰も入ってきませんように・・・・と。
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しばらくして、2人組みが私のコンパートメントに入ってきた。仕方ないか。と思って荷物を自分の脇によせ、窓側2席を自分の席とし、中央と通路側の4席をゆずった。旅行者と思われる彼らは、「HOT! HOT!」とか言って、窓を開け、上着を脱いだ。そして、しばらくして、何か2人で話をしたと思ったら、 荷物をまとめて部屋から出ていってしまった。どうやら、2等車両と間違えて、1等車両に乗ってしまったようだった。
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彼らのおかげかどうかは分からないが、ローマ・テルミニ駅を列車が出発する時、コンパートメントの乗客は、めでたく私1人だった。列車は音もなく動き出し、ローマの街に別れを告げる。部屋の電気を点けると、外の景色が見えなくなってしまうので、やっぱり電気は消したままだった。
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途中2つほど駅に停まったが、乗客はみな通路を素通りするだけで、私のコンパートメントの中を覗こうとする人はいなかった。外国人旅行者でもない限り、1等車両のそれも座席車両にのろうなんて人はいないのだろう。 さらにしばらくして、検札がやってきた。私はパスをみせ、挨拶をする。検札が終われば、もうだれも来ないだろうと、私は、三人席の肘掛けを上にあげ、横になって眠ることにした。
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どうせ緊張して眠れないだろうけど、横になって疲れだけはとっておこうと思った数分後、私は深い眠りについていた。
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2000年4月1日(土)
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明るい駅に停まったところで、目が覚めた。3時50分。ボローニャ駅だった。こんな深夜だというのに、ホームにはけっこう人の動きが見え、BARも開いていた。 寝起きで、ボーっとしていると、ドヤドヤと2人の青年(あんちゃん!?)が乗り込んできた。計算違いだー。こんな時間に停車しても、誰も乗ってこないだろうと 思ってたのにー。ま、仕方ないか。今までラッキーだったと思おう。 あんちゃん達が何か言っているが分かるはずもなく、ただただSORRYと繰り返すと、"Are you Japanese?"と聞いてきた。イエスと答えると、笑顔になって、 「はじめまして!」と握手を求めてきた。もちろん日本語で。でも、どうやら彼の知っている日本語はそれだけのようで、その後会話は続かなかった。
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1室に3人になったことで、3人席を占領して横になることができなくなってしまった。 それに、あんちゃんは、携帯電話で話をしている。それも、何ミリオンリラとか、なんか景気のいいこと言っている。どうやら偉い人とその付き人のようだ。(パッと見は友達同士にしか見えなかったが) もしかして、ヤバい人?とか思ったけど、金持ちだったら、寝台車両に乗るだろうと、勝手な理由で安心した。でも、座った状態で、それもやや緊張している状態で、眠れないな〜と思っていたら、肩をたたかれた。 振り返ると、彼らは、座席を引き出して、平らなベッド状にしていた。えっ?? これって、そんな風に動くの? 感激!! って、旅慣れた人たちと同室になったおかげで、私はこの時以降、フラットな状態で眠ることが出来るようになった。(感謝!!)
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午前6時過ぎ、ミラノ中央駅に静かに列車は到着した。(着いたのに、気付かなかった!!)あんちゃんたち2人はさっさと身支度をして出ていった。わたしも荷物をまとめて出ていった。
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今日はミラノ→ドモドッソラ→ロカルノ→ドモドッソラ→ミラノと、1日の半分以上を列車の中で過ごすことになる。昨日まで歩いての観光ばっかりだったので、ちょうど良い休息日だと思った。ドモドッソラ行きの列車の出発までまだ少し時間があるので、駅の構内を 散歩するも、朝食を取るようなところは開いてなかった。仕方なくBARでカプチーノを飲み、昨日テルミニ駅で買ったマドレーヌを食べた。
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7時30分発のインターラピットに乗車。朝早いだけあって、1等車両にいるのは私の他には鉄道職員が1人乗っているだけだった。 ミラノの街はさほど大きくないらしく、車窓はすぐに田園風景に変わった。
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1時間ほど車窓を楽しんでいると、右手に湖が見えてきた。マッジョーレ湖だ。川を渡り、右手に広がる湖の向こうには、ようやくスイスアルプスが顔を出し始めた。 アローナの駅をすぎ、しばらくしてストレーザの駅についた。朝早いというのに、駅にはかなりの数の旅行者であふれていた。 すると、同じ車両にのっていた乗務員が、私に話し掛けてきた。
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「ストレーザに着いたぞ。お前は、ここで降りるんじゃないのか。」
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私は、自分の目的地がドモドッソラであることを告げる。おっさんは少し不思議そうな顔をしながら、(なんでそんなところへ行くの?ってかんじで)もう一度 自分の席についたようだった。そこからは、右をみても左を見ても、田園風景の向こうにアルプスがそびえる、素敵な車窓が続いた。ストレーザからドモドッソラまでの40分間はあっという間だった。
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ドモドッソラの駅前は、静かな地方の町といった感じだった。ここからは南アルプス鉄道に乗り換え、チェント渓谷を越えて、スイスに入るのだ。
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地下のホームへ向かうと、窓口があり、切符を買う。ロカルノまで往復で、32000リラは、高いか、安いか!?
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電車の出発までまだ時間があることを確認し、駅のBARに戻って、遅い朝食を取ることに。小さなピザを2000リラで買って食べる。冷めてしまっていたけど、なかなか美味しかった。
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電車は、路面電車のような小さ目サイズだが、しっかり1等車と2等車があり、1等車の方は、団体客が大勢いた。
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私は一人で2等車両に乗り込み、あれこれ考えた挙げ句、南側の席につく。
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電車はほぼ満席になって出発。はじめはのどかな田園風景の中を走っていたが、すぐに山を登り始める。
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大きくカーブしながら蛇行したり、スイッチバックをしたりしながら、高度をぐんぐん上げる。出発してから20分ほどたったころ、山の北側の斜面に残雪が残る風景に出くわした。
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外はかなりの寒さらしく、窓ガラスがどんどん曇っていく。長袖2枚しか着ていない(もちろん、上着なんて持っていない)のに、平気なんだろうか!? と、ちょっぴり不安になる。列車はぐんぐん高度を上げ、谷はどんどん深くなり、雪解け水が、滝になって景観を作り出している。それにしても、向かいのオヤジは、さっきから居眠りしたまんま。こんな素敵な景色を見ないなんて、もったいない…。それとも、もう見飽きているのか!? う〜ん、羨ましい。
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出発から50分後、長いトンネルを抜けると、景色が一新。いままで生い茂っていた落葉樹が、常緑樹にかわり、日差しは強く、付近の雪は見えなくなっていった。高度を少しずつ下げ始めているのか、北側の斜面にも残雪は見当たらない。
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立て続けにトンネルをくぐり、やっとはじめて駅に停車した。(今まで駅がなかったのではなく、快速のような列車に乗ったため。)
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乗客が乗ってくるのかと思ったら、パスポートチェックだった。そう、ここはイタリアとスイスの国境の駅だったのだ。でも、パスポートチェックといっても、パスポートを持っているかどうかをチェックする程度で、みな表紙しか見せていないようだった。
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その間、たった2〜3分の停車時間だったが、開けっぱなしのドアから冷気が入り込み、足元が寒くなった。
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列車は再び走り出し、スイスに入国。それと共に、車窓の眺めも今までの渓谷美から、豊かな水を湛えた川の流れへと変化していった。
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トンネルをくぐるたびに、景色が少しずつ変わっていくのが何とも楽しい。今度は、ダムが見えた。次は対岸にポツリと民家が。その民家から張られている電線は、物資輸送用のロープウェイに早変わりするようだった。でも、人はどうやって移動する!? やっぱり不思議な光景だ。
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前方の風景が少しずつひらけ、マッジョーレ湖の湖畔に広がる街、ロカルノが見えてきた。
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鉄道は最後に地下へ潜り、ロカルノ駅に到着した。1時間50分の行程だった。
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地下の駅から地上に上がると、抜けるような青空が広がった。普通は、イタリアからアルプスを越えてスイスに渡ると、空がどんよりするということを聞くが、全く反対の光景だった。
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その街はとてものどかで、軽井沢や山中湖のような、避暑地のような、リゾート地のような雰囲気を持っていた。
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ここで、1つ問題が浮上してきた。ややお腹が減っているのだが、私はスイスフランを持ち合わせていない。そして今日は土曜日。開いている銀行はあるのか!? と、しばらく街をぶらつきながら探すが、見つけられず。 |
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